良いところを見つけて褒める
クラスのみんなから「あの人といると、なんだか元気になるな」「また一緒に遊びたいな」と思われる人には、ある共通点があります。それは、「相手のいいところを見つける名人」であるということです。
「褒める」というと、なんだかむずかしいことに感じるかもしれません。「お世辞を言わなきゃいけないの?」「うそをつくのは苦手だな……」と思う人もいるでしょう。でも、安心してください。ここでいう「褒める」とは、相手をもち上げることではなく、「相手ががんばっていることや、素敵なところに気づいて、それを言葉にして伝えること」を指します。
実はこれ、心理学や行動学の世界では、人間関係を最高のものにするための「最強の魔法」として知られているんです。
「ポジティブな注目」が人を動かす
行動学の世界では、人は「自分がしたことに対して、良い反応が返ってくると、その行動をもっと繰り返したくなる」という性質があることがわかっています。これを専門用語で「正の強化」と呼びます。簡単にいうと、「褒められると、その人はもっといいことをしたくなる」ということです。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
- 係の仕事で、黒板をいつもより丁寧に消している友達がいたとき。
- 掃除の時間に、誰もやりたがらない重い机を運んでいる友達がいたとき。
- いつもは静かな子が、授業で勇気を出して手を挙げたとき。
このとき、心の中で「えらいな」と思うだけでなく、一言だけ声をかけてみてください。「今の黒板の消し方、すごく丁寧だね!」「机運ぶの手伝ってくれて助かったよ」「今の意見、わかりやすくてよかったよ!」と。
言われた相手は、どんな気持ちになるでしょうか? きっと、胸の奥がポッと温かくなって、「また次もがんばろう!」という気持ちになるはずです。そして、あなたに対して「この人は、自分のことを見てくれている」という信頼感を抱くようになります。
「協力」が生まれるゲームのルール
ゲーム理論という学問では、人間がどうやって協力し合うのかを研究しています。その中でわかっている大切なルールがあります。それは、「相手に親切にすると、相手も自分に親切にしてくれる」という連鎖です。
クラスという場所は、みんなで協力して生活する大きなゲームのようなものです。もしあなたが、誰かのいいところを見つけて褒めるという「親切な行動」を先に始めれば、その親切は必ず誰かに伝わります。褒められた相手は、今度は別の誰かのいいところを見つけて褒めるようになるかもしれません。
そうやって、クラスの中に「いいところを見つけて伝え合う」という空気が広がると、どうなるでしょうか? 教室全体が、お互いを応援し合う「最高のチーム」に変わるのです。あなたが「褒める」という小さな一歩を踏み出すだけで、クラスの雰囲気そのものを変えることができる。これって、とってもワクワクしませんか?
明日からできる「褒め上手」になるための3ステップ
では、具体的にどうやって「いいところ」を見つければいいのでしょうか。今日からすぐに実践できる、3つのコツを教えます。
1. 「あたりまえ」に注目してみる
すごい結果や、大きな成功だけが褒める対象ではありません。むしろ、毎日繰り返される「あたりまえのこと」こそ、褒めポイントの宝庫です。
- 毎日忘れ物をしていないこと
- 挨拶をちゃんとしていること
- 宿題を提出していること
- 授業中に背筋を伸ばしていること
「いつも宿題ちゃんと出してるね、すごいね!」という一言は、相手にとって「自分はちゃんと見てもらえているんだ」という大きな安心感になります。
2. 「具体的に」伝える
ただ「すごいね」と言うだけよりも、何がどうすごかったのかを伝えると、相手の心にはもっと深く響きます。
- ×「すごいね」
- ○「さっきの計算問題、みんなが迷っているときに一番に解き方を見つけていたよね。あきらめないで考えていたのがかっこよかったよ!」
このように、相手の「行動」を具体的に言葉にすると、相手は「自分のどこが認められたのか」がよくわかるので、自信を持つことができます。
3. 「自分」を主語にして伝える(アイ・メッセージ)
「君はすごい」と言うのもいいですが、「私はこう感じた」と伝えると、より気持ちが伝わりやすくなります。
- 「〇〇さんが手伝ってくれたおかげで、私はすごく助かったよ」
- 「〇〇くんが笑わせてくれたから、僕は元気が出たよ」
「私は」を主語にすると、相手を評価するのではなく、「あなたの行動が、私を幸せにしてくれた」という感謝の気持ちが伝わります。これは、相手にとって一番うれしい褒め言葉です。
「褒める」は、自分を好きになる練習でもある
最後に、とても大切なことを伝えます。他人のいいところを見つけるのが上手な人は、実は「自分のいいところ」を見つけるのも上手になっていきます。
毎日、友達の素敵なところを探していると、脳が自然と「ポジティブなことを見つけるモード」に切り替わるからです。そうすると、夜寝る前に「今日は自分も、これができたな」「ここががんばれたな」と、自分自身のいいところにも気づけるようになります。
誰かを褒めることは、その人を幸せにするだけでなく、あなた自身の心も豊かにしてくれます。明日、学校に行ったら、まずは隣の席の友達の「ちょっといいところ」を一つだけ探してみてください。
「消しゴムを貸してくれてありがとう」「その筆箱、使いやすそうだね」「今日の服、似合ってるね」。どんな小さなことでもかまいません。あなたのその一言が、クラスを明るくする魔法の種になるのです。
さあ、明日はどんな素敵なところを見つけに行きますか?