自分の自慢話よりも相手の質問を優先する

📖 『「なぜか好かれる人」のひみつ——嫌われないための10のルール——』
ー 第3章:誤解を生まない「言葉選び」のルール ー
\ 悩める青年へ――明日を変える突破口 /
自分の自慢話よりも相手の質問を優先する
全 40 ページ中 12 ページ目

自分の自慢話よりも相手の質問を優先する

「ねえ、聞いてよ! この前さ、部活の練習試合で相手のエースから三振奪ったんだよね。しかも、そのあと自分もホームラン打っちゃってさ、マジでオレすごくない?」

こんな風に、自分のすごい話をしてしまったあと、相手の目がなんとなく泳いだり、「へえ、すごいね……」と棒読みで返されたりして、気まずい空気になった経験はありませんか? 私はあります。黒歴史として思い出すだけで、今でも布団の中でジタバタしたくなるくらいです。

私たちは、自分のすごいところを知ってほしい、認められたいという気持ちを強く持っています。特に中学生という多感な時期は、「まわりからすごいと思われたい」「カッコよく見られたい」という欲求がピークに達する頃です。テストでいい点を取ったとき、部活で活躍したとき、あるいはマニアックなアニメやゲームに詳しいとき。自分の「自慢」を誰かに話したくてウズウズしてしまうのは、ごく自然なことです。

しかし、ここで残酷な現実をお伝えしなければなりません。あなたが一生懸命に自分の自慢話を語れば語るほど、周りの人はあなたから離れていってしまうのです。

「えっ、じゃあ自分の頑張りを認めてもらうのはダメなの?」

いいえ、そんなことはありません。問題なのは「どのタイミングで、どちらを優先しているか」という、言葉のバランスなのです。今回は、会話の主導権を上手に手放し、なぜかまわりから好かれる人たちが無意識にやっている「言葉選びのルール」についてお話ししていきます。

なぜ私たちは自分の話ばかりしてしまうのか

まずは、私たちの脳の仕組みから紐解いてみましょう。脳科学や心理学の研究において、人間は「自分のことについて話しているとき、脳の報酬系(快感を感じる部分)が激しく刺激される」ことが分かっています。つまり、自分の自慢話や趣味の話をしている瞬間、私たちは脳内でドラッグが分泌されるような快感を味わっているのです。お金をもらったときや、美味しいものを食べたときと同じ脳の反応が起きています。

だからこそ、話を止められなくなります。「私の話を聞いて!」という状態のとき、私たちは相手の表情や「そろそろ話を変えたいな」というサインを見落としてしまいます。休み時間の教室を思い浮かべてみてください。自分の推しのアイドルの話をマシンガンのように語り続けるA君と、相槌を打ちながら「それってどういう意味なの?」と聞き返してくれるB君。どちらと一緒にいたいと思うかは、言うまでもありませんよね。

社会言語学や語用論という、言葉が人間関係や社会に与える影響を研究する学問の世界では、コミュニケーションは常に「顔を立てる(フェイス)」の奪い合いであると考えます。人間には、「自分の自尊心を守りたい、すごく見られたい(ポジティブ・フェイス)」と「人に干渉されたくない、自分のペースでいたい(ネガティブ・フェイス)」という2つの欲求があります。

自分が自慢話をするとき、私たちは無意識のうちに「自分のポジティブ・フェイス(すごく見られたい欲求)」を最優先し、相手のそれを踏みにじっているのです。相手に「すごいね」と言わせることで、自分のプライドを満たそうとしています。これが、「なんかこの人と話すと疲れるな」「自慢ばかりでうざいな」と思われる原因の正体です。

「会話のキャッチボール」の本当の意味

国語の授業などで「会話はキャッチボールが大切です」と教わったことがあると思います。でも、実際の教室での会話を見てみると、多くの人はキャッチボールではなく「壁打ち」をしています。

  • A: 「オレ、昨日塾のテストで学年10位に入ったんだぜ!」
  • B: 「マジで? すごいじゃん! 実はオレも……」
  • A: 「いや、聞いてよ、そのあとさ……」

これでは、お互いが「自分のボール(自慢)」を相手に投げつけているだけで、キャッチボールにはなっていません。どちらがより遠くにボールを飛ばせるかのマウントの取り合いです。これでは人間関係は深まりませんし、むしろ「面倒くさいやつ」というレッテルを貼られてしまいます。

本当に好かれる人は、このキャッチボールのルールを完全に理解しています。彼らは、「自分がボールを投げる回数よりも、相手にボールを投げてもらう回数を増やす」という戦略をとっているのです。

「質問」という名の魔法のパス

ここで重要なのが、今回の記事のタイトルでもある「自分の自慢話よりも相手の質問を優先する」というアプローチです。

質問をすることは、相手に対して「私はあなたに興味があります」「あなたの話を聞かせてください」という最大の敬意を示す行為です。語用論の観点から言えば、質問は相手の「すごく見られたい欲求(ポジティブ・フェイス)」を安全に満たしてあげるための、最高のプレゼントなのです。

例えば、あなたが新しいスニーカーを買ったとします。自慢したい気持ちをぐっとこらえて、友達にこう話しかけてみたと想像してください。

「ねえ、○○くんって確かバスケ部だよね。いつもどんなバッシュ履いてるの? 選び方のこだわりとかある?」

この一言を投げかけられた相手はどう感じるでしょうか。「お、自分の得意分野について聞いてくれたぞ!」「自分のこだわりを分かそうとしてくれている!」と、嬉しくなって自分の話を生き生きと語り始めるはずです。人は、自分の話を熱心に聞いてくれる人のことを「話しやすい人」「気が合う人」「いい人」と無意識に判断します。あなたが自分の自慢話を1時間するよりも、相手に2つ、3つ良い質問をして相手に話させる方が、はるかに「好印象」を残すことができるのです。

中学生の日常で使える具体的な「質問のテクニック」

「でも、いざ質問しようと思っても、なんて聞いていいか分からない……」

そんなふうに悩む人のために、明日から学校で使える具体的なテクニックをいくつか紹介しましょう。難しい技術は必要ありません。ちょっとした「視点の切り替え」だけです。

  • 「事実」ではなく「こだわり・理由」を聞く

    例えば、友達がノートを綺麗に取っているのを見つけたとき、「綺麗だね」で会話を終わらせるのではなく、「その青ペン、どうしてこの部分だけ使ってるの?」と「理由」を聞いてみます。理由やこだわりには、その人の個性や価値観が表れるため、相手は話していて楽しくなります。
  • 「相手の得意分野」をフックにする

    クラスの目立たない子であっても、イラストが上手だったり、音楽に詳しかったり、特定のゲームのランクが高かったりします。「ねえ、ここんとこの描き方どうやるのコツある?」と、相手が誇りに思っていそうなポイントをあらかじめリサーチして質問してみましょう。驚くほど嬉しそうに教えてくれます。
  • 「オープン・クエスチョン」を使う

    「はい」「いいえ」で答えられる質問(クローズド・クエスチョン)ではなく、「どう思う?」「なんでそうしたの?」と、相手が自由に言葉を選んで話せる質問(オープン・クエスチョン)を意識します。これにより、相手は「自分の意見を尊重してもらえている」と感じ、あなたへの信頼感が急上昇します。

自慢したくなったときの「脳内ブレーキ」の踏み方

とはいえ、人間ですもの。どうしても自分の成果を誰かに聞いてほしい日だってあります。テストで自己最高得点を取ったときや、大会で優勝したとき。誰だって「すごいね!」って褒めてほしいのは当たり前の感情です。

そんなときは、どうすればいいのでしょうか。ここで大切なのは、「自慢をしてはいけない」と自分を抑え込むことではありません。大切なのは、「順番を変える」ということです。

心理学の研究では、人は「自分の話を聞いてくれた人に対して、お返しにその人の話を聞いてあげたくなる」という性質(返報性の原理)を持っていることが分かっています。つまり、こちらから先に相手への質問を優先し、相手の話をしっかり聞いてあげると、不思議なことに、そのあとで相手から「ところで、お前はどうだったの?」と聞いてくれる確率が跳ね上がるのです。

会話の順序をこのように変えてみてください。

  • 【× NGな順序】

    自分が自慢する ➔ 相手が無理やり相槌を打つ ➔ 気まずい雰囲気になって終わる
  • 【〇 好かれる人の順序】

    まず相手に質問して話を聴く ➔ 相手が気持ちよくなる ➔ 相手が「で、お前はどうだったの?」と聞いてくれる ➔ 自分の成果を謙虚に、かつ嬉しそうに話す

この順序を守るだけで、あなたの周りの空気は劇的に変わります。自慢話を自分で切り出さなくても、相手が「ねえねえ、聞いてよ!」とあなたに話を振ってくれるようになるのです。これこそが、本当の意味で「なぜか好かれる人」がやっているコミュニケーションのからくりです。

まとめの代わりに:今日から教室で試してほしいこと

明日、学校に行ったら、まずは自分の「すごいところアピール」を半分に減らしてみましょう。その代わり、隣の席の友達や、部活の仲間のちょっとした変化や得意なことに目を向けて、一つだけ質問を投げかけてみてください。

「それ、どこで買ったの?」

「昨日のテスト、難しかったけどどうだった?」

そんな何気ない一言が、あなたと周りの人との関係を心地よいものに変えてくれます。主役はあなただけではありません。目の前にいる友達にも、それぞれの物語や「聞いてほしいこと」があります。自分の自慢話というマイクを一度そっと置き、相手にマイクを渡してあげる。その優しさと賢さを持てたとき、あなたはもう「人間関係で悩まされない、一歩大人な自分」に出会えているはずです。

📖 『「なぜか好かれる人」のひみつ——嫌われないための10のルール——』
全 40 ページ中 12 ページ目

タイトルとURLをコピーしました