「どうせ私なんて……」が口癖になっていない?
朝、鏡を見て「あ、今日前髪キマった!」と思っても、学校に着く頃には「あの子のメイク、なんか垢抜けてて可愛いな」「それに比べて私なんて……」と、つい誰かと自分を比べて落ち込んでしまう。テストの順位が返ってきたときも、「前回より上がった!」と喜んだ直後に、学年トップの友達の点数を見て「私バカだな」と自己嫌悪の渦に飲み込まれる。
部活でもそうかもしれません。レギュラーになれなかったとき、「自分は練習サボったから当然だ」と思うのはまだ健全ですが、「どうせ監督はあの先輩びいきだし」「私なんか、何をやってもレギュラーになれるわけない」と、努力する前から諦めるような言葉が頭をグルグル回っていませんか?
思春期である中学生の毎日は、人間関係の縮図です。LINEの返信が少し遅かっただけで「私、何か嫌われるようなこと言ったかな」と不安になり、グループ内の自分の立ち位置ばかりが気になってしまう。心の中が「どうせ」「でも」「だって」というネガティブな感情でいっぱいになると、不思議と顔つきも暗くなり、声のトーンも小さくなって、結果的に周りからも話しかけづらいオーラを放ってしまいます。
実は、これには明確な理由があります。人間の脳には、生存本能として「ネガティブな情報に強く反応する」という初期設定が備わっているからです。太古の昔、人間にとって危険を察知すること(=ネガティブなことへの注目)は生き残るために必須でした。だから、私たちの脳は放っておくと、自分のダメなところや、他人の嫌なところ、クラスのギスギスした空気を自動的に探し出してしまうようにできています。
でも、安心してください。脳のこの仕組みを知り、ちょっとした「コツ」さえ掴めば、ネガティブの沼から抜け出すことができます。今回は、脳科学と心理学の力を借りて、無理なく自然に「なぜか好かれる人」になるための最強の習慣についてお話しします。
脳の性質を利用する!ネガティブ思考の正体
脳科学が証明する「メラビアンの法則」と「脳の勘違い」
心理学や脳科学の世界では、人間の脳は「主語を理解できない」という面白い性質を持っていると言われています。どういうことかと言うと、あなたが心の中で「あいつ、マジでうざい」「あの子って調子に乗ってて嫌い」と思ったとき、脳は「誰が」を認識できず、ただ「うざい」「嫌い」という強い感情のエネルギーだけを自分に浴びせてしまうのです。
つまり、他人の欠点や悪いところばかりを探して心の中で攻撃しているとき、実はあなたの脳は、自分自身を攻撃しているのと同じダメージを受けていることになります。これが、人を嫌ったりねたんだりしている人が、なぜかいつもイライラしていて、表情が険しくなり、結果的に周りから人が離れていってしまう本当の理由です。
人の悪口やネガティブな感想を口にしたり、心の中で思ったりすることは、自分で自分のメンタルを傷つけ、さらに周囲への印象を悪くする「一石二鳥ならぬ、一石二鳥のマイナス」を生み出しているのです。では、これを逆手に取ったらどうなるでしょうか?
「褒める脳」を作ると、世界の見え方が180度変わる
脳が「主語を区別できない」のであれば、他人の良いところを見つけて心の中で褒めたとき、脳はどう反応するでしょうか?
- 「あの子、ノートのまとめ方上手だな」と思う
- 「今日の部活、あの先輩声出ててかっこよかったな」と思う
- 「先生の今日のシャツ、ちょっとおしゃれだな」と思う
このように、他人の素晴らしい部分に目を向けて心の中で称賛すると、脳は「素晴らしい」「素敵だ」「美しい」というポジティブな主語なきエネルギーをそのまま自分取り込みます。その結果、あなたの脳内にはドーパミンやセロトニンといった「幸福ホルモン」が分泌され、表情が穏やかになり、自然と笑顔が増えるのです。
心理学における「認知の歪み(にんちのゆがみ)」という言葉があります。私たちはストレスがたまると、物事の悪い面ばかりを拡大して捉えてしまうクセがあります。しかし、意図的に「人の良いところを探す」というフィルターをかけることで、この認知の歪みを修正し、脳を「ポジティブな状態」にハッキングすることができるのです。
今日からできる!「心の中で一人一褒め」の習慣
理屈は分かったけれど、「クラスのあの苦手なやつの良いところなんて見つからないよ」と思うかもしれません。大丈夫です。聖人君主になる必要はありません。ほんの些細なこと、日常のすれ違いの中でできる簡単なトレーニング方法を紹介します。
具体的なシチュエーション別・褒めポイントの探し方
学校生活の様々な場面で、この「心の中の褒め」をゲーム感覚で実践してみましょう。
- 登校・朝のホームルーム:
クラスに入ったとき、いつも一番に挨拶をしてくれる委員長を見つけたら、「今日も声出してて偉いな」と思う。あるいは、席の近い友達が新しい消しゴムを使っていたら「それ可愛いな」と心の中でつぶやく。
- 授業中:
先生の難しい質問に対して、普段はあまり目立たないクラスメイトが勇気を出して手を上げている姿を見たら、「お、すごい挑戦してるな、カッコいいぞ」と心の中で拍手を送る。たとえ間違えたとしても、「発言する勇気があって素晴らしい」と捉える。
- 部活動・放課後:
後輩が片付けを一生懸命やっている姿を見かけたら、「見えないところで頑張ってくれてるんだな、ありがとう」と感謝の気持ちを持つ。ライバルの子が練習後にこっそり自主練しているのを見たら、「負けてられないな、でもあいつも努力家だな」とリスペクトの気持ちを持つ。
大切なのは、これを本人に面と向かって言う必要はないということです。(もちろん、言える関係なら伝えても良いですが!)大事なのは、あなたの「脳の検索エンジン」のキーワードを、「粗探しモード」から「良いところ探しモード」に切り替えることなのです。
なぜ、「人の良いところを褒める人」は好かれるのか?
ここで、最初のテーマに戻りましょう。なぜ、他人の良いところを見つけて心の中で褒める習慣が、「なぜか好かれる人」を作るのでしょうか?
心理学に「返報性の原理(へんぽうせいのげんり)」という法則があります。人間は、何かをしてもらうと「お返しをしなければならない」と感じる生き物です。これは行動だけでなく、感情やエネルギーにも当てはまります。
あなたが心の中で誰かを褒め、その人の良い波動を受け入れているとき、あなたの醸し出す雰囲気(非言語コミュニケーション)は、驚くほど柔らかく、温かいものに変化します。メラビアンの法則によれば、人が他人に与える印象の大部分は言葉以外の要素(表情、声のトーン、姿勢など)が決めています。
つまり、心の中で人を褒め、ポジティブな脳で生きている人は、無意識のうちに「私はあなたに敵意を持っていませんよ」「あなたの存在を認めていますよ」というサインを全身から発信しているのです。
周りの人は、論理で説明できなくても、本能的にその居心地の良さを感じ取ります。「この人といるとなんだかホッとする」「話を否定されないから安心できる」。そう思われる人の周りには、自然と人が集まってきます。クラスのなかの人間関係のモヤモヤや、居心地の悪さは、あなたが「心の持ちよう」をほんの少し変えるだけで、劇的に改善していくのです。
明日から、いや、今この瞬間から始めよう
明日、学校に行ったら、まずは一番最初にすれ違った人の「良いところ」を一つだけ見つけてみてください。
「カバンのキーホルダーが可愛いな」でもいいし、「姿勢がピンとしていて綺麗だな」でもいい。どんなに小さなことでも構いません。それを心の中でそっと呟いてみる。それだけで、あなたの脳は「ポジティブ思考のスイッチ」が入り、今日という日の見え方が少しだけ違ってくるはずです。
誰かを批判したくなったり、自分を責めてしまったりしそうになったときこそ、思い出してください。あなたの脳は、あなたが思った通りの世界を作り出します。他人の良いところを見つけることは、巡り巡って、あなた自身の魅力を最高に輝かせるための、一番近道なのです。