相手の立場になって一度考えてみる
クラスで生活していると、どうしても「ムカッ」とすることがありますよね。たとえば、休み時間に一生懸命つくった図工の作品を、走ってきた友達にぶつかられて壊されてしまったとき。あるいは、係の仕事で自分ばかりが働いているように感じて、イライラしてしまうとき。
そんなとき、とっさに怒鳴ったり、相手を責めたりしたくなるのは当たり前のことです。でも、実は「敵を作らない子」は、怒りの感情をぶつける前に、ある「魔法のひと呼吸」を置いています。それが「相手の立場になって一度考えてみる」という習慣です。
「自分」と「相手」のメガネをかけかえる
行動学の世界では、人間には「自分中心にものを見てしまう」というクセがあることがわかっています。これを「自己中心性バイアス」と呼びます。専門用語で難しそうですが、簡単に言うと「自分のことはよく見えるけれど、相手の事情は見えにくい」という心のクセのことです。
たとえば、友達が約束の時間に遅れてきたとします。あなたは「待たされた!」と怒りますよね。でも、遅れてきた友達には「家を出る直前に、お母さんに頼みごとをされた」「道で迷子の子を見つけて助けていた」といった、あなたには見えない「事情」があるかもしれません。
相手の立場になって考えるというのは、「いま自分がかけているメガネを一度はずして、相手のメガネをかけ直す」ようなイメージです。これだけで、見える景色がガラリと変わります。
トラブルを止める「3秒の魔法」
行動経済学では、人間の行動は「速い思考」と「遅い思考」の2つに分けられると教えてくれます。「速い思考」は、感情的で反射的な判断のこと。「遅い思考」は、冷静に状況を分析する判断のことです。
トラブルが起きたとき、怒りのままに行動するのは「速い思考」です。でも、これだと相手もカッとなって、ケンカになってしまいます。そこで、「3秒だけ待つ」ことを試してみてください。
- 1秒目:「あ、いま自分は怒っているな」と自分の感情に気づく。
- 2秒目:「相手は、なぜそうしたのかな?」と想像してみる。
- 3秒目:「もし自分が相手だったら、どうしていただろう?」と考える。
たったこれだけで、脳が「速い思考」から「遅い思考」に切り替わります。この余裕があるだけで、ケンカは驚くほど減ります。
「もしも」の想像力を広げる具体例
では、学校生活でよくある場面で、どうやって「相手の立場」を想像すればいいのか、具体的に見ていきましょう。
1. 係の仕事をやってくれない友達がいるとき
「なんで自分ばっかり!」と怒る前に、こう考えてみてください。「もしかして、やり方がわからなくて困っているのかな?」「実は、ほかの係の仕事で手一杯なのかもしれない」。もしそうなら、怒るよりも「ここのやり方、いっしょにやろうか?」と声をかけるほうが、ずっと早く解決しますよね。
2. 休み時間に話しかけても無視されたとき
「嫌われたのかな?」と不安になる前に、こう考えてみましょう。「テストのことで頭がいっぱいなのかな?」「さっき先生に叱られて、落ち込んでいるのかも」。相手が無視したのは、あなたを嫌っているからではなく、相手自身の心に余裕がないからかもしれません。
「相手の事情」を想像する練習
相手の立場になって考える力は、筋肉と同じで、使えば使うほど鍛えられます。明日から、こんな「想像ゲーム」をやってみてください。
- 「あだ名で呼ばれて嫌なとき」:相手は「仲良くなりたい」という気持ちが空回りしているだけかも?
- 「ふざけて邪魔をしてくる子がいるとき」:相手は「自分にかまってほしい」と寂しがっているのかも?
- 「家でお手伝いをしてくれない兄弟がいるとき」:相手は「疲れていて、休みたい」というサインを出しているのかも?
もちろん、どうしても許せないことや、悪いことは悪いと伝える勇気も大切です。でも、怒りをぶつける前に「相手の立場」を想像するだけで、あなたの言葉は相手に届きやすくなります。攻撃的な言葉ではなく、相手の心に寄り添う言葉が出てくるようになるからです。
まとめ:あなたは「理解者」になれる
「相手の立場になって考える」ことは、相手を甘やかすことではありません。「自分をコントロールする力」を身につけることです。自分の怒りをコントロールし、相手の事情を理解しようとする姿勢は、周りの人から見ると「なんて大人で、優しい子なんだろう」と映ります。
クラスのみんなが、あなたのことを「この子に相談すると、ちゃんと分かってくれる」「この子と話すと落ち着く」と感じるようになれば、自然と敵はいなくなります。それどころか、あなたの周りには、あなたのことを大切に思ってくれる友達がたくさん集まってくるはずです。
さあ、明日学校に行ったら、誰かが何かをしてきたとき、深呼吸を3秒だけしてみてください。その小さな「想像の魔法」が、あなたの学校生活をより明るく、楽しいものに変えてくれるはずですよ。