暗い顔をしている子には笑顔で話しかける
教室のドアを開けたとき、いつもとちょっと違う空気に気づくことはありませんか?
たとえば、いつもは元気なめいちゃんが、今日は机にふせったままでなんだか暗い顔をしている。宿題のノートを配っているとき、いつもはニコニコしているけんた君が、今日は眉間にしわをよせてむすっとしている。
そんなとき、あなたはどうしていますか?
「なんだか機嫌が悪そうだから、今日はそっとしておこう…」
そう思って、見ないふりをして通りすぎてしまうことはありませんか? その気持ち、よく分かります。怒っていたり落ち込んでいたりする人に話しかけるのは、少し勇気がいりますよね。「話しかけて、怒られたらどうしよう」とドキドキしてしまうこともあるでしょう。
でも、ちょっと待ってください。ここであなたが「魔法の笑顔」で話しかけることができたら、その日が終わるころには、その子とびっきりの大親友になれているかもしれないのです。
今日は、まわりの空気をパッと明るくして、自分もまわりのみんなも大好きになってしまう「暗い顔をしている子には笑顔で話しかける」という秘密の作戦についてお話しします。
なぜ「笑顔」で話しかけると、みんながハッピーになるの?
「でも先生、どうして暗い顔をしている子に、わざわざこっちから笑顔で話しかけなきゃいけないの?」
そう思いますよね。ここには、人間がもっている脳のすごい秘密がかくされているのです。実はこれ、脳科学というお勉強でちゃんと証明されていることなんですよ。
私たちの脳には「ミラーニューロン」という魔法の鏡がある
私たちの頭の中には、「ミラーニューロン」という名前の、とっても不思議な細胞(さいぼう)がすんでいます。
ミラーとは、英語で「鏡(かがみ)」のことです。この細胞は、まるで心の鏡のように、まわりの人の表情や動きをそのまま自分のことのようにキャッチしてしまう働きをもっています。
たとえば、テレビでおいしそうにケーキを食べている人を見ると、なんだか自分も食べたくなって、口の中につばが出てきませんか? スポーツ選手がゴールを決めて大喜びしている姿を見ると、自分まで胸が熱くなって嬉しくなりますよね。
あれはぜんぶ、この「ミラーニューロン」が働いているからなのです。
あなたの笑顔が、友達の脳に届く
これを学校の教室に置きかえてみましょう。
テストの点数が悪くて落ち込んでいたり、朝お母さんとケンカしてきちゃったりして、心がどんより曇り空になっているお友だちがいたとします。その子の脳は、いま「悲しいモード」「イライラモード」になっています。
そこに、あなたが暗い顔をして「どうしたの…?」と近づいていったらどうなるでしょうか? お友だちのミラーニューロンは、あなたの暗い顔を鏡のようにうつしてしまい、もっとどんよりした気持ちになってしまいます。
でも、ここであなたが太陽のようにまぶしい「笑顔」で近づいていったらどうでしょう?
「おっ、なんか楽しそうな子が来たぞ?」
お友だちの脳にあるミラーニューロンが、あなたの笑顔をキャッチして、「なんだか分からないけど、つられて笑いそうになるな」「心がフッと軽くなったな」と感じはじめます。不思議なことに、人間の脳は、口角を上げてニコッと笑うだけで、「楽しいことがあったんだ!」と勘違いして、体の中から元気ホルモンを出してくれるようにできているのです。
つまり、あなたが笑顔で話しかけることは、お友だちの脳に「元気になっていいんだよ」「もう大丈夫だよ」という温かいサインを送るリモコンのようなものなのです。
明日からできる!「笑顔で話しかける」3つのステップ
「理屈は分かったけれど、具体的にどうやって話しかけたらいいの?」
そんなあなたのために、明日からすぐに学校でできる3つのステップを紹介します。どれもむずかしいことではありません。ゲーム感覚で試してみましょう。
ステップ1:まずは「3メートルの距離」でニコッとする
いきなり近くにいって話しかけるのは、やっぱり少し緊張しますよね。だから最初は、少し離れた場所からスタートです。
- 廊下ですれちがったとき
- 係の仕事をしていて、ふと目が合ったとき
- 給食の準備中で、遠くの席に座っているとき
お友だちと3メートルくらいの距離(だいたい教室の端から端くらい、または大きな一歩を4〜5歩くらい歩いた距離)になったら、言葉は出さなくていいので、「ニコッ」と目を見つめて笑ってみましょう。
ポイントは、「目も笑うこと」です。口だけを横に広げても、目が笑っていないとロボットみたいになってしまうので、「おはよう!」「今日もいい天気だね!」という楽しい気持ちを目の奥にこめるのがコツです。
ステップ2:相手の名前を呼んで、ひと言だけ声をかける
遠くでの笑顔ができるようになったら、次は近くに行って声をかけてみましょう。
ここで大事なのは、「相手の名前を呼ぶこと」です。人って、自分の名前を呼ばれるだけで、心を開きやすくなるという心理のルールがあります。
たとえば、こんなふうに声をかけてみてください。
- 「〇〇ちゃん、おはよー! 今日の洋服、かわいいね」
- 「〇〇くん、この前の係の仕事、手伝ってくれてありがとう!」
- 「ねえねえ、今日の国語の宿題、もうやった?」
内容は、本当に他愛(たあい)のないことで大丈夫です。天気の話でも、給食のメニューの話でも構いません。「あなたに関心をもっていますよ」というサインを、笑顔と一緒に届けることが何よりも大切なのです。
ステップ3:もし相手の返事がそっけなくても、気にしない
ここで、ひとつ大切なアドバイスがあります。
あなたが勇気を出して「おはよー!」と笑顔で話しかけたのに、お友だちは「……うん、おはよ」と、あまりうれしそうにしてくれなかったり、そっぽを向かれてしまったりすることが、もしかしたらあるかもしれません。
そんなとき、「嫌われちゃったのかな…」「もう話しかけるのやめよう」と落ち込まないでください。
お友だちは、あなたのことが嫌いだからそっけない態度をとっているわけではありません。ただ、まだ心のバッテリーが「ゼロ」の状態で、充電が追いついていないだけなのです。頭の中がいっぱいいっぱいで、笑顔を返すエネルギーが残っていなかったのかもしれません。
そんなときは、心の中でこうつぶやきましょう。
「そっか、今日は充電が切れてるんだな。また明日、元気に挨拶しよう!」
一回断られたくらいであなたの価値は下がりませんし、あなたの笑顔パワーは無駄になっていません。お友だちの脳の奥底には、あなたがくれた笑顔のデータがちゃーんとたまっています。何日か続けていくうちに、ある日突然、向こうから満面の笑みで「おはよー!」と返してくれる日が必ずやってきますよ。
教室の「太陽」になるあなたへ
学校という場所は、いろんな気持ちを持った子どもたちが集まる小さな社会です。
楽しい日もあれば、なんだか泣きたいくらい悲しい日もある。クラスのなかに、ちょっぴり雨が降っているような日だってあります。
そんなとき、あなたがクラスの「太陽」になってみませんか?
暗い顔をしている子を見つけたときに、見ないふりをするのではなく、「どうしたの?」の代わりに「ニコッ」と笑顔をむけてみる。たったそれだけのことで、教室の空気がフッと明るくなり、クラス全体が温かいエネルギーに包まれるのです。
笑顔は、自分もまわりの人も一瞬で元気にしてしまう、この世で一番すてきな魔法です。特別な道具も、お金もいりません。あなたのその小さな口元と、優しい心さえあれば、いつでもどこでも使うことができます。
明日、学校の教室に入ったとき、まずはまわりをよーく見回してみてください。
「あれ、今日は少し元気がなさそうだな」と思う子がいたら、深呼吸をして、あなたの最高の笑顔をプレゼントしてみましょう。
その一歩から、あなたのまわりには、たくさんの笑顔と、あたたかい絆がどんどん広がっていきますよ。