否定から入らず「そうだね」と一度受け止める
クラスで、こんな場面はありませんか?
休み時間に友達が「ねえ、今日の算数の宿題、すごくむずかしくない?」と言ってきました。そのとき、あなたは心の中で「え、そうかな? ぼくは簡単だったけどな」と思ったとします。思わず口から出そうになる「えー、そうかな? ぼくは簡単だったよ」という言葉。ちょっと待ってください。その一言が、実は「味方を遠ざける壁」になっているかもしれません。
「自分と違う意見」を聞いたとき、反射的に「いや」「でも」「ちがうよ」と言ってしまうことは、誰にでもあります。でも、いつも「否定」から入る人は、周りから「この人と話すと、なんだか否定されている気分になるな」と思われてしまいます。反対に、自然と人が集まる「好かれる人」は、相手の言葉を一度「受け止める」という魔法を使っています。
「そうだね」は、相手の心を開くカギ
相手の話を否定せずに「そうだね」と一度受け止める。これだけで、相手は「この人は自分の気持ちをわかってくれた!」と安心します。これを心理学や言葉のルールを研究する世界では「協調の原理(きょうちょうのげんり)」といいます。会話というのは、お互いに「あなたの言っていることを理解しましたよ」というサインを出し合うことで、スムーズに進むものなのです。
もし、さっきの場面でこう返したらどうでしょう?
- 友達:「今日の算数の宿題、すごくむずかしくない?」
- あなた:「そうだね。確かに、最後の問題はちょっと考えちゃうよね」
こう言えば、友達は「そうそう! 最後の問題が特にね!」と、もっと楽しく会話を続けられますよね。あなたは自分の意見を捨てたわけではありません。ただ、相手の「むずかしい」という気持ちを、まずは「そうだね」と受け止めただけです。これだけで、相手はあなたを「自分の味方だ」と感じます。
「でも」を「それでね」に変えてみる
否定から入ってしまう人の多くは、無意識に「でも」という言葉を使っています。「でも」は、相手の言葉を切り捨てるパワーがとても強い言葉です。この「でも」を、別の言葉に置き換えるだけで、あなたの話し方は劇的に変わります。
おすすめなのは「それでね」という言葉です。否定するのではなく、自分の意見を「付け加える」イメージで使ってみましょう。
- 友達:「休み時間はドッジボールがしたいな!」
- あなた(本当は鬼ごっこがいいとき):「そうだね。ドッジボールも楽しいよね。それでね、昨日の鬼ごっこがすごく楽しかったから、今日は鬼ごっこもやりたいなと思ってるんだけど、どうかな?」
こう言われると、友達も「それなら、半分ずつにしようか?」と相談しやすくなりますよね。「そうだね」で相手の意見を尊重し、「それでね」で自分の意見を伝える。この順番を守るだけで、あなたの周りには自然と人が集まるようになります。
「受け止める」は、相手を認めること
社会言語学という難しい言葉の世界では、会話を「相手のテリトリー(自分の場所)に一歩踏み入れること」だと考えます。相手が何かを言ったとき、それは相手の心の中にある「考え」というお部屋に招いてくれたのと同じことなのです。
そこでいきなり「ちがうよ」と否定するのは、招いてくれた相手のお部屋で、土足で暴れるようなもの。まずは「そうだね」と靴を脱いで、相手のお部屋に入らせてもらう。これが、会話の基本ルールです。
「そうだね」と言うことは、必ずしも「相手の意見に100%賛成する」ということではありません。「あなたがそう思っていることは、ちゃんと聞きましたよ」という「承認(しょうにん)」のサインなのです。
明日からできる「魔法のトレーニング」
今日から、学校で意識してほしいことが3つあります。どれか一つだけでもいいので、明日試してみてください。
- まずは「そうだね」と口に出す: 友達の話を聞いたとき、どんなことでもいいので、まずは「そうだね」と心の中でつぶやいてから、口に出してみましょう。
- 「でも」を禁止にする: 1日だけ、会話の中で「でも」という言葉を使わないようにチャレンジしてみてください。代わりに「そうなんだね」「それもいいね」を使ってみましょう。
- 相手の気持ちをオウム返しする: 「宿題むずかしい」と言われたら「宿題むずかしいんだね」と繰り返すだけでも、相手は「わかってくれた!」と喜びます。
「否定から入らない」ことは、相手を大切にすることです。相手を大切にすれば、相手も必ずあなたを大切にしてくれます。これこそが、無意識に味方を増やし、クラスでいちばん好かれる人になるための、一番最初の魔法なのです。
明日の朝、クラスに入ったら、誰かの一言に対して、まずは「そうだね」と笑顔で返してみてください。その一言から、あなたの周りの空気が、ふわりと温かくなるのをきっと感じられるはずですよ。