大切なものを貸すときはルールを相談する
学校で、友達から「それ、ちょっと貸して!」と言われたことはありませんか?
新しく買ったばかりのシャープペンシル、お気に入りのイラストが描かれた下敷き、図書室でやっと借りられた人気のマンガ、あるいは、クラスの係活動で使う大切な道具。友達に「貸して」と言われると、うれしい気持ちになる一方で、心の中が少しだけ「モヤモヤ」することはありませんか?
「汚されたら嫌だな……」
「もし、壊されちゃったらどうしよう」
「いつ返してくれるのかな。まさか、そのまま自分のものにされちゃわないよね?」
そんな心配が頭をよぎって、貸すのをためらってしまったり、逆に断れなくて貸したものの、返ってくるまでずっとソワソワして授業に集中できなかったり。そんな経験は、きっと誰にでもあるはずです。
実は、借りる方の友達も、心の中ではドキドキしています。
「いつまでに返せばいいのかな?」
「もし、使っているときに芯が詰まっちゃったら、怒られるかな?」
お互いに相手のことが大好きなのに、貸し借りのせいで、なぜかお互いに緊張してしまう。そして、もしも返ってくるのが遅かったり、少し傷がついていたりすると、一気に「もうあいつには貸さない!」「あの子、ケチだな」と、ケンカのきっかけになってしまいます。せっかくの友達なのに、敵になってしまうのは悲しいですよね。
でも、安心してください。大切なものを貸すときに、お互いがもっと仲良くなり、クラスでの「信頼(しんらい)」を2倍にも3倍にも増やすことができる、とっておきの「魔法」があります。それは、貸す前に「ルール」を相談するということです。
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天才科学者たちが考えた「みんながハッピーになるゲーム」
「ルールを相談するなんて、なんだか細かくてケチだと思われないかな?」と心配になりましたか?
実は、まったくそんなことはありません。むしろ、ルールを決めることこそが、お互いを一番大切にする方法なのです。これには、世界中の天才科学者たちが大真面目に研究している「ゲーム理論(ゲームりろん)」という、とても賢い考え方のヒミツが隠されています。
ゲーム理論とは、テレビゲームの攻略法ではありません。「自分と相手が、どう行動すれば、お互いに一番トクをして、一番ハッピーになれるか」を計算する、頭のいい作戦会議のようなものです。
このゲーム理論の中に、こんな面白いお話があります。ルールが何もない自由な世界で、2人の人が何かを分け合ったり、助け合ったりしようとすると、どうしてもお互いに「相手がズルをするかもしれない」と疑ってしまいます。すると、自分も損をしたくないので、意地悪な行動をとってしまい、結果的にお互いが大損をしてしまうのです。これを、難しい言葉で「ジレンマ」と呼びます。
例えば、ルールがないサッカーを想像してみてください。「手を使っていいのか」「どこまでがコートなのか」が決まっていなかったら、どうなるでしょうか?
「今のはハンドだ!」「いや、手を使っていいんだ!」と、絶対に大ゲンカになりますよね。楽しくサッカーをやりたくて集まったのに、ルールがないせいで、みんなが嫌な気持ちになってしまいます。
学校での「貸し借り」も、これとまったく同じです。
「貸し借りのルール」が決まっていないから、お互いにどう行動していいか分からず、不安になってしまうのです。だからこそ、貸す前に「お互いがハッピーになるためのルール」という名の、ゲームのきまりを作っておく必要があります。ルールさえ決まっていれば、お互いに安心して、笑顔で「ありがとう!」と言い合えるゲーム(貸し借り)ができるようになるのです。
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「おたがいハッピー」をつくる3つのルール相談
では、友達から「貸して!」と言われたとき、どのようにルールを相談すればいいのでしょうか。ゲーム理論の考え方を使って、お互いに「協力(きょうりょく)」し合えるようになる、3つのステップを紹介します。明日からすぐに使える、魔法のセリフと一緒に覚えてみましょう!
- ステップ①:「いつ返すか」を決める(期限のルール)
- ステップ②:「どうやって使うか」を約束する(使い方のルール)
- ステップ③:「もしものとき」を相談しておく(トラブルのルール)
この3つのステップを、具体的な学校生活の場面にあてはめてみていきましょう。
ステップ①:「いつ返すか」を決める
貸し借りで一番多いトラブルは、「いつまでも返してくれない」ということです。貸した方は「早く返して」と言いづらいですし、借りた方は「いつでもいいや」と忘れてしまいがちです。
そこで、貸す瞬間に、返す時間をはっきりと決めておきます。
【魔法のセリフ】
「いいよ!今日の5時間目が終わったら、私の席まで返しにきてくれる?」
「いいよ!宿題で使いたいから、明日の朝、朝の会の前に返してね」
このように、「何曜日の、どの時間までに」というところまで具体的に決めるのがコツです。時間が決まっていると、借りた友達も「あ、もうすぐ5時間目が終わるから、返しに行かなきゃ!」と、安心して行動することができます。
ステップ②:「どうやって使うか」を約束する
大切なものは、きれいに使ってほしいですよね。でも、人によって「きれいに使う」の基準は違います。だからこそ、自分のこだわりを優しく伝えておきましょう。
【魔法のセリフ】
「この色ペン、お気に入りだから、使い終わったらキャップを『カチッ』と音がするまで閉めてね」
「このマンガ、ページを折らないで読んでくれるとうれしいな。しおりを挟んで使ってね」
「大切にしているから、こうしてほしい」という理由をセットで伝えると、相手は「わかった、大切に使うね!」と、喜んで約束を守ってくれます。あなたのものを大切に扱うことは、あなた自身を大切にすることと同じだと、友達も分かってくれるはずです。
ステップ③:「もしものとき」を相談しておく
これが一番大切なステップです。どれだけ気をつけていても、うっかり鉛筆を落として芯を折ってしまったり、本に水をこぼしてしまったりする事故は起こります。そのときに、お互いが気まずくならないための「もしものルール」を、あらかじめ相談しておきます。
【魔法のセリフ】
「もし、使っているときに壊れちゃったり、失くしちゃったりしたら、隠さずにすぐ教えてね。怒らないから大丈夫だよ!」
この一言があるだけで、借りる友達の心の負担はすうっと軽くなります。「もし何かあっても、正直に言えば大丈夫なんだ」と思えるからこそ、あなたのことを「本当に信頼できる友達だ」と感じるのです。
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ルールを決めることは、相手を「信じる」こと
「でもやっぱり、貸すときにこんなにたくさんルールを言うと、細かい奴だと思われそう……」と、まだ少し不安に思う人もいるかもしれませんね。
ここで、もう一度「ゲーム理論」のヒミツを思い出してください。
科学者の研究では、「お互いにルールをしっかりと確認し合っている関係ほど、相手を強く信じることができ、友情が長続きする」ということが分かっています。
何も言わずに「いいよ」と貸すのは、一見、優しくてかっこいい先輩のように見えるかもしれません。しかし、それはルールを決めずにサッカーを始めるのと同じです。相手がルールを知らないままボールを手で触ってしまったとき、あなたは心の中で「あいつ、サイテーだ」と怒ることになります。それは、本当の優しさでしょうか?
「ルールを相談しよう」と言うことは、ケチなのではありません。
「私は、あなたとケンカしたくない。これからもずっと、仲良くしていたいから、お互いに安心できる方法で貸し借りしようね」という、相手に対する「最高の思いやり」のメッセージなのです。
クラスの友達も、あなたからルールを提案されたとき、「冷たいな」とは思いません。むしろ、「この子は、ものを大切にするしっかりした子だな」「ルールを決めてくれたから、安心して借りられるな」と、あなたに対して知的な憧れを抱くようになります。ルールを作ることで、あなたのクラスでの「信頼バロメーター」は、ぐんぐんと上がっていくのです。
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明日から学校でやってみよう!魔法の「貸し借りシート」
それでは、明日から学校で使える、ワクワクするようなアイデアを紹介します。言葉で言うのが少し恥ずかしいときは、こんな「ゲーム感覚」の方法を試してみてはいかがでしょうか?
ノートの切れ端や、かわいい付箋(ふせん)を使って、小さな「お約束チケット」を作ってみるのです。
例えば、こんな風に書いておきます。
【お約束チケットのれい】
★〇〇ちゃんのシャープペン貸出チケット★
・かえす時間:今日の帰りの会のまえ
・おねがい:芯(しん)が詰まったら教えてね!
・ひとこと:たくさん使ってね!
これを、貸す道具と一緒に「はい、これチケットね!」と笑顔で渡すのです。これなら、言いにくいルールも、まるで秘密のゲームのミッションのように、楽しく伝えることができます。受け取った友達も、「わあ、なにこれ!面白い!」と喜んで、ルールをしっかり守ってくれるでしょう。
また、クラスの係活動や、班でのポスター作りのときにも、この方法は大活躍します。
「班のハサミやのりをみんなで使うときは、使い終わったら必ず真ん中のカゴに戻すルールにしよう!」と、あなたから提案してみてください。みんなが「それいいね!」と賛成し、道具がなくなるトラブルが一気になくなります。あなたはクラスをハッピーにする「名プロデューサー」になれるのです。
貸し借りのルールを相談することは、敵を作らないための、とても強力な魔法です。お互いのドキドキをワクワクに変えて、明日、友達から「貸して!」と言われたら、ぜひ笑顔で「いいよ!じゃあ、お互いがハッピーになるルールを相談しよう!」と声をかけてみてくださいね!