部活の帰り道、なぜか気まずくなる理由
放課後のチャイムが鳴り響き、部活の道具を片付けて校門を出る。今日は仲のいいグループの友達と一緒にてくてく歩きながら帰る約束をしている。「お疲れー!」なんて軽口を叩きながら歩き始めたはいいものの、なんだか最近、この帰り道が少しだけ息苦しい。
あなたはこんな経験ありませんか?
- 気づけば、自分が友達の少し後ろを小走りで追いかける形になっている
- 逆に、自分がスタスタと先に行ってしまい、後ろから「ちょっと待ってよー」と声をかけられる
- 並んで歩いているはずなのに、なぜか会話が続かず、沈黙のたびに足元ばかり見てしまう
「自分、なんか嫌なこと言っちゃったかな……」
「一緒に帰るの、退屈だと思われてるのかも……」
そんな風に、帰り道のたびにモヤモヤを抱えていませんか? 安心してください。それはあなたのトーク力が低いわけでも、性格が悪いわけでもありません。原因はもっとシンプル。それは、「歩くスピードのズレ」にあります。
人間関係の距離感は、実は「言葉」よりも「足音」で決まっています。今回は、クラスの人間関係や部活のメンバーから「あの人、なんか一緒にいて居心地がいいな」と思われるための、とっておきのルールをお話しします。
「歩くスピード」は心の距離を表している
ここで少し、文化人類学や社会言語学という、人間の行動や言葉のルールを研究する学問の話をさせてください。
これらの研究において、人間にはそれぞれ「パーソナルスペース」(自分を取り囲む目に見えない縄張り)や、心地よいと感じる距離感があることが分かっています。そして面白いことに、人間は「心理的に親しいと感じる相手ほど、歩くスピードやリズムを無意識に同調させようとする」性質を持っているのです。
これを専門用語では「歩行の同調(シンクロニー)」と言ったりします。難しい言葉ですが、要するにこういうことです。
- 大好きな友達や、もっと仲良くなりたいと心の底から思っている相手とは、自然と歩幅やスピードがぴったり重なる
- 逆に、苦手な人や、まだ距離を測りかねている人と歩くときは、相手のペースを無視して歩いてしまったり、妙に距離が空いたりする
つまり、私たちは言葉で「よろしくね」と言いながら、体(足)の動きで「私はあなたにこれくらい心を開いていますよ」というサインを無意識に送り合っているのです。
もしあなたが、友達と歩いているときにいつも置いていかれたり、逆に引き離したりしているとしたら? 相手は無意識のうちに、こう感じているかもしれません。
「この人といると、自分のペースが乱されるな」「なんだかリズムが合わないな」と。
これが、「なんかいい感じ」の反対にある、「なんとなく噛み合わない」の正体です。
今日からできる!「お揃いのリズム」を作る3つのステップ
では、どうすればこの「歩くスピードのズレ」を解消し、好印象を与えることができるのでしょうか。答えは簡単です。「相手の歩くスピードに、自分の全神経をちょっとだけ合わせてみる」これだけです。
具体的に、明日からすぐに試せる3つのステップを紹介します。
ステップ1:最初の10歩で「相手の歩幅」を観察する
学校を出て歩き始めの最初の10歩、あなたはどこを見ていますか? スマホの画面ですか? それとも遠くの電柱ですか?
今日からは、最初の10歩だけ「友達の足元」をチラッと見てみてください。
背の低い子や、今日はローファーが痛くて歩きにくそうな子、あるいは今日買ったばかりの重い荷物を持っている子。その人の足の回転の速さ、歩幅の広さが分かります。
「あ、今日は少しゆっくりめだな」「いつもより歩幅が狭いな」というデータが取れたら、それが今日の基準です。
ステップ2:自分の歩幅を「一回り小さく」する
相手のスピードが自分より遅いと感じたら、自分の歩幅を意識的に「キュッ」と小さくしてみましょう。感覚としては、普段の8割くらいのイメージです。
中学生の男子にありがちなのが、自分の足の長さに任せて大股でスタスタ歩いてしまうこと。これでは、女子や体格の小さい男子は小走りしなくては追いつきません。
「あ、待たせてるな」と思ったら、少し歩幅を狭めて、肩の力を抜いてみてください。
逆に、相手のほうが歩くのが早い場合は、少しだけ背筋を伸ばし、腕を軽く振ってピッチ(足の回転数)を合わせます。この「合わせようとしてくれている姿勢」だけで、相手は「あ、自分のこと気にかけてくれているんだな」と温かい気持ちになるものです。
ステップ3:横並びの「2人だけの空間」を楽しむ
スピードがピタリと合うと、何が起きるでしょうか。
不思議なことに、歩くリズムが揃うと、会話のテンポも驚くほどスムーズになります。どちらかが無理をして合わせる必要がないため、脳のメモリを「歩くこと」ではなく「会話やその場の空気感」に100%使えるからです。
前を向いて歩きながら、ふとした瞬間に視線を合わせて笑い合う。時には、並んで歩く影がトコトコと綺麗に並んでいるのを見る。その空間そのものが、「居心地のいい時間」に変わっていきます。
「歩き方」を変えると、クラスの空気が変わる
クラス替え直後でまだグループが決まっていないとき。新しい部活の先輩とうまく話せないとき。あるいは、いつも一緒にいる親友とちょっと気まずい空気になってしまったとき。
私たちはどうしても、「何か面白い話をしなければ」「気の利いた返事を返さなければ」と、言葉のスキルばかりを気にしがちです。
でも、思春期の人間関係において、言葉以上に雄弁なのは「態度」であり「身体の動き」です。
相手の歩くスピードに合わせて並んで歩くという行為は、言葉にしなくても「私はあなたのペースを尊重しています」「あなたと一緒にいるこの時間を大切に思っています」というメッセージを、100%確実に相手の心に届けてくれます。
明日、学校からの帰り道。
隣を歩く友達の足音に、ほんの少しだけ耳を澄ましてみてください。
カツ、カツ、トコ、トコ。
その足音が、あなたと友達の心を繋ぐ優しいリズムになったとき、あなたの周りには自然と「心地いい空気感」が生まれ、まわりから「あの人、なんかいい感じ」と愛される存在になっているはずです。