忘れ物をした友達に文房具を貸す
算数のじかん、先生が「ノートを出して」と言いました。となりの席のAくんが、カバンの中をあわててさがしています。どうやら、筆箱をわすれてしまったみたいです。顔がまっ赤になって、今にも泣き出しそう。そんなとき、あなたならどうしますか?
「えー、貸してあげないよ。ちゃんと準備してこないのが悪いんだもん」
もしそう思ってしまったら、ちょっと待って! その一言で、あなたは「クラスでいちばん好かれる人」になるチャンスを、自分から手放しているのと同じなんです。実は、困っている友達にさっと文房具を貸すことは、あなたの「味方」をふやす、もっともかんたんで最強の魔法なんですよ。
「おたがいさま」の脳は、あなたをヒーローにする
心理学には「返報性(へんぽうせい)の原理」という言葉があります。これは、「何かをしてもらうと、お返しをしたくなる」という、人間の心にそなわっている不思議な力のことです。
あなたがAくんに消しゴムを貸してあげたとします。すると、Aくんの脳の中では「助けてもらった! お礼をしないと!」という気持ちがわきあがります。これは、ただのお礼の言葉だけではありません。Aくんの中で、あなたのことが「困ったときに助けてくれる、頼りになる人」として、深くきざみこまれるのです。
脳科学の研究でも、人が誰かに親切にすると、自分の脳の中に「ドーパミン」という、ワクワクしたり幸せを感じたりする物質が出ることがわかっています。つまり、文房具を貸すことは、相手を助けるだけでなく、あなた自身の心もポカポカと幸せにしてくれるということなのです。
「貸してあげる」ときの魔法のひとこと
ただ貸すだけでも立派ですが、もっと「味方」をふやすためには、貸し方にもちょっとしたコツがあります。大事なのは、相手のプライドを守ってあげることです。
- 「筆箱わすれたの? だらしないなあ」と言いながら貸す(×)
- 「これ、予備があるから使っていいよ。私もよくわすれるから大丈夫!」と言いながら貸す(◎)
「私もよくわすれるから」という一言をそえるだけで、Aくんの「はずかしい」という気持ちは、一気に「安心」に変わります。相手を上から目線で助けるのではなく、「同じ目線」で寄りそってあげること。これが、あなたのまわりに人が集まってくる理由になります。
「貸す」ことで生まれる、見えないつながり
クラスでいちばん好かれる人は、文房具を貸すときに、見返りを求めません。「貸してやったんだから、今度お菓子ちょうだいね」なんて言わなくても、相手はかならず覚えています。あなたがテストで困ったとき、あるいは係の仕事で忙しいとき、きっと誰かが「前は助けてくれてありがとう」と、あなたをサポートしてくれるはずです。
これは、クラスの中に「助け合いのネットワーク」を作るようなものです。あなたが小さな親切をまけばまくほど、そのネットワークは広がり、あなたのまわりにはいつも温かい空気が流れるようになります。
明日からできる「小さな魔法」の練習帳
さあ、明日からはじめてみましょう。クラスで困っている人を見つけたら、まずは自分から声をかける準備をしてください。文房具を貸すときに、こんなふうに伝えてみてください。
- 「これ、使っていいよ。終わったら返してくれれば大丈夫!」
- 「筆箱、重いよね。私も出し忘れることあるから気にしないで!」
- 「先生に見つかると大変だから、こっそり使おうね」
ポイントは、「あなたが困っているときも、助けてもらえるから大丈夫だよ」というメッセージを、態度でしめすことです。貸し借りは、ただのモノの移動ではありません。心と心のあいだに、見えない「信頼の糸」をはる作業なのです。
「あの人は、いつも助けてくれる」
そんな評判は、あっという間にクラス中に広がります。そうすれば、あなたが何か失敗をしてしまったときも、みんなが笑ってゆるしてくれるでしょう。なぜなら、あなたはすでに、クラスのみんなにとっての「大切な味方」になっているからです。
さあ、明日の朝、筆箱をわすれてオロオロしている友達がいたら、深呼吸をして、ニッコリ笑ってこう言ってみましょう。「貸してあげようか?」
その一言が、あなたの学校生活を、もっとキラキラ輝くものに変えてくれる魔法のはじまりです。