「今日はこれができた」と寝る前に3つ数える

📖 『「感じがいい人」だけが知っている、誰からも好かれる10の小さな習慣』
ー 第10章:自分を好きになるための「セルフ・コンパッション」 ー
\ 悩める青年へ――明日を変える突破口 /
「今日はこれができた」と寝る前に3つ数える
全 40 ページ中 40 ページ目

「今日もダメだった……」と天井を見上げて眠る夜へ

夜、部屋の電気を消してベッドに入った瞬間、今日一日の出来事がフラッシュバックするように頭を駆け巡ることはありませんか。

「あそこであんなこと言わなきゃよかったな」

「数学の小テスト、またケアレスミスしちゃった。隣の席のあいつは満点だったのに」

「部活のミーティングで、先輩からの質問にうまく答えられなくて、みんな変な空気になった気泡がまだ胸に残ってる……」

目を閉じれば閉じるほど、今日自分がやらかしたこと、うまくいかなかったこと、周りの人より劣っていると感じたことばかりがスクリーンに映し出される。そして最後に、「私(僕)って、本当にダメだな」という結論で一日を締めくくってしまう。そんな夜を、何度も過ごしてきたのではないでしょうか。

スマホを開けば、SNSには充実した高校生活を送る同級生のキラキラした投稿が流れてくる。文化祭の楽しそうな準備風景、テストの好成績を喜ぶストーリー、友達と笑い合うプリクラ。それと比べて、教室の隅でうまく馴染めなかったり、部活で怒られてばかりだったりする自分の現実を突きつけられ、心がすり減っていく。

「もっとうまく立ち回れたはずなのに」

「どうして私は、みんなみたいに自然に愛想よくできないんだろう」

そうやって毎日のように自分を厳しくジャッジし、ダメ出しをし続けているあなたへ。まず、一番大切なことを伝えます。あなたが今感じている生きづらさや自己嫌悪の正体は、あなたの人間性が劣っているからでも、性格に欠陥があるからでもありません。あなたはただ、「自分に対する厳しすぎるムチ」の打ち方を知りすぎてしまっただけなのです。

人に悪印象を与えないための技術を磨く前に、そして誰からも好かれるような魅力的な人になる前に、一番最初にクリアしなければならない絶対的な条件があります。それは、「自分自身と仲直りすること」。鏡に映る自分を敵だと思っている人が、心の底から他人に優しくすることはできません。今日は、ボロボロになったあなたの心を優しく包み込み、明日からまた軽やかな足取りで学校に向かうための、とっておきの心理学の技術をお伝えします。

心理学が証明する「自分を責めるほどパフォーマンスが落ちる」という残酷な真実

「もっと自分を追い込まないと成長できない」

「反省しないと、次も同じ失敗をする」

真面目で責任感の強い高校生ほど、こう考えがちです。部活でミスをしたとき、「俺って本当に使えないな」と自分を責めることで、次は絶対にミスしないように気合を入れようとする。テストで赤点スレスレの点数を取ったとき、「私の脳みそは終わっている」と心の中で罵倒することで、勉強へのプレッシャーをかけようとする。

しかし、現代の心理学において、この「自分を厳しく責めること(セルフ・フラゲレーション)」の教育的・精神的な効果は、完全に否定されています。

スタンフォード大学などで研究されている「セルフ・コンパッション(自己への慈しみ)」という心理学の概念があります。これは、自分に対して、まるで大切な親友が落ち込んでいるときのように、優しく、思いやりを持って接するというアプローチです。

セルフ・コンパッションの研究の第一人者であるクリスティン・ネフ博士は、人間が自分を責め立てるとき、脳の防衛システム(脅威システム)が過剰に反応していると指摘しています。野生の猛獣に遭遇したときと同じように、脳は自分自身を「外敵」とみなし、戦闘モードまたはフリーズ状態に入ってしまうのです。

想像してみてください。あなたが部活でミスをした直後、鬼のような形相の先輩に「お前は何をやってもダメだな!」と怒鳴られたらどうでしょうか。萎縮して体がこわばり、次のプレーではさらに緊張して、もっとひどいミスをしてしまいますよね。自分を厳しく責めるというのは、脳内で毎日、自分自身に対してそのパワハラを行っているのと同じことなのです。

自分を許すことは「甘え」ではなく「燃料」である

「でも、自分を甘やかしたら、どんどんダメな人間になっていく気がするんです」

そう不安になる気持ちもよく分かります。日本の学校文化の中では、「反省=自分を罰すること」として教えられることが多いからです。

しかし、心理学の実験では、セルフ・コンパッションが高い人(つまり、失敗した自分を「まあ、そんな時もあるよね」と受容できる人)ほど、以下のような特徴を持つことが分かっています。

  • 失敗から立ち直るスピード(レジリエンス)が圧倒的に早い
  • 新しい難しい課題に挑戦する心理的ハードルが低い
  • 他人の失敗に対しても寛容になり、人間関係が良好になる
  • 長期的なモチベーションが持続しやすい

つまり、自分を責めることは、車を走らせるときにアクセルとブレーキを同時に踏み続けているようなものです。エネルギーを無駄に消耗するだけで、前に進むスピードは落ちてしまいます。本当に成長したいのであれば、必要なのは自己否定という鞭ではなく、「失敗したけれど、よく頑張ったよ」という自分への共感という名の燃料なのです。

「今日はこれができた」と寝る前に3つ数える

では、具体的にどうすれば、この「セルフ・コンパッション」の力を自分のものにできるのでしょうか。明日から、いや、今夜からできる最もシンプルで強力な習慣が、「寝る前に『今日できたこと』を3つ数える」というものです。

やり方は驚くほど拍子抜けするほど簡単です。夜、布団に入り、目を閉じたとき、スマホの画面を見る代わりに、今日一日を脳内で静かに巻き戻します。そして、大げさなことではなく、本当に些細なことで構わないので、「今日、自分ができたこと」「よくやったこと」を3つ、心の中で数え上げるのです。

例えば、ある高校生のリアルな一日は、こんな風に変換できます。

ある女子高生(高2・文系)の「できたこと3つ」の例

  • 1つ目:朝、眠くて仕方がなかったけれど、アラームが鳴ってから10分以内にちゃんと布団から出られた。
  • 2つ目:苦手な数学の授業で、先生にあてられて頭が真っ白になりかけたけど、知っている単語だけでも最後まで声を絞り出して答えた。
  • 3つ目:帰りのホームルームで、いつもならスマホばかり見てしまうところを、少しだけ前を向いて担任の連絡事項を聞いていた。

どうでしょうか。客観的に見れば、「数学の授業でうまく答えられなかった」「テスト勉強は計画通りに進まなかった」といったネガティブな要素が山ほどあった一日かもしれません。しかし、その泥だらけの現実の中から、「微小な光」を自分の手で丁寧に拾い上げる作業を、あえて行うのです。

脳の「ネガティブ・バイアス」をハックする

なぜ、こんな当たり前のようなことをわざわざするのでしょうか。それには、人間の脳の進化の歴史が深く関係しています。私たちの脳には、大昔から生き残るために、ポジティブな出来事よりもネガティブな出来事を何倍も強く記憶しようとする「ネガティブ・バイアス」という本能が備わっています。

放っておくと、脳は自動的に「今日怒られたこと」「うまくいかなかったこと」をリフレインし続けます。意識的に「今日できたこと3つ」を数えるという行為は、この強力なネガティブ・バイアスにブレーキをかけ、脳のデフォルト設定を「自己否定」から「自己承認」へと書き換えるための、いわば脳のハッキング技術なのです。

最初は、「いやいや、こんなの当たり前のことだし……」「こんなことで自分を褒めるなんて甘えだ」と、心のどこかで違和感を覚えるかもしれません。昨日まで散々自分を雑に扱ってきたのですから、急に優しくしようとしても、心が戸惑うのは当然です。

それでも構いません。最初は機械的に、「お、今日はちゃんと朝起きられたな。1点」「英語の単語テスト、昨日より2点上がったな。2点」「買い物のとき、店員さんに『ありがとうございます』って聞こえる声で言えたな。3点」と、心の中でカウントしてみてください。

これを1週間、2週間と続けていくと、不思議な変化が起き始めます。日中、学校で嫌なことがあったり、友達との会話で少し気まずい空気になったりしたときでも、脳のどこかで**「まあ、夜ベッドに入れば、あの件を『できたこと』に昇華してやろう」**という、一種の逃げ道、お守りのような余裕が生まれるのです。

「感じがいい人」の正体は、自分を味方にできた人

『「感じがいい人」だけが知っている、誰からも好かれる10の小さな習慣』の最終章として、このセルフ・コンパッションをお伝えしているのには、明確な理由があります。

クラスの中でいつも自然体で、誰に対しても感じがよく、周囲に人が集まってくる人たちを観察してみてください。彼らは、決して生まれつきスーパーマンのように完璧で、悩みがないわけではありません。テストで赤点を取るときもあるし、部活でミスをして落ち込むこともあります。誰かに冷たくされて傷つく夜だって、あなたと同じようにたくさんあるはずです。

決定的な違いは、その人たちが「自分自身の最大の理解者であり、味方である」ということです。

自分を常に疑い、「私なんてどうせ好かれない」「どうせ失敗する」と心の中で自分を攻撃している人は、無意識のうちにそのギスギスしたエネルギーを周囲に発散させてしまいます。余裕がなくなっているため、他人のちょっとした言動に過剰に反応してイライラしたり、周りの目を過剰に気にして不自然な笑顔を作ってしまったりするのです。その結果、「なんだか近寄りがたい」「気を使わせる人」という悪印象を与えてしまう。

反対に、自分を大切に扱い、どんなに不格好な一日だったとしても「よくやったよ」と布団の中で自分を抱きしめてあげられる人は、心に圧倒的な「余白」が生まれます。

その余白があるからこそ、クラスの隅でポツンとしているクラスメイトに声をかけられたり、友達のミスを「そんなこともあるよ」と笑顔で許せたりする。誰かに嫌なことを言われても、「まあ、あいつも今日機嫌が悪かっただけだな」と、自分を攻撃する材料にせず、サラリと受け流すことができる。

「誰からも好かれる人」とは、他人に好かれるために自分を殺している人ではなく、まず最初に「自分自身から一番に好かれている人」なのです。

今日から始まる、あなただけの新しい夜のルーティン

明日から学校が始まります。また思い通りにいかないこと、人間関係でモヤモヤすること、自分にガッカリすることがきっとあるでしょう。それは高校生活を送る上で、避けることのできない現実です。

だからこそ、夜の時間の使い方を変えてみてください。

スマホのブルーライトを浴びながら、他人の充実したSNSの投稿を眺めて「自分はダメだ」とHP(ヒットポイント)を削る夜は、今日で終わりにしましょう。

部屋の明かりを消し、静かな布団の中に潜り込む。今日一日を生き抜いた自分に向けて、心の中で小さく語りかけてみる。

「今日もよく生き延びたな」

「あの時、逃げずに教室に座っていただけでもう100点満点だ」

「明日も、私のペースでいけばいい」

「今日はこれができた」と、指を折りながら3つ数える。その小さな習慣の積み重ねが、硬く凍りついていたあなたの心を少しずつ溶かし、鏡に映る自分を自然と好きになれる日を連れてきてくれます。

あなたは、あなたが思っているよりもずっとよくやっています。誰になんと言われようと、今日一日を懸命にサバイブした自分自身だけは、毎晩、あなた自身の手で優しく労ってあげてください。その温もりこそが、明日、学校のドアを開けるときの、何よりの最強の味方になるのですから。

📖 『「感じがいい人」だけが知っている、誰からも好かれる10の小さな習慣』
全 40 ページ中 40 ページ目
« 前のページ
最後のページ »

タイトルとURLをコピーしました