他人と自分を比較するSNSの時間を減らす
夜中の2時、真っ暗な部屋でスマートフォンの画面だけが青白く光っている。通知音を気にして、なんとなく開いたInstagram。そこには、放課後に友達とカフェで笑い合っている写真や、テスト期間中なのに「勉強中」というスタンプとともに整えられたデスクが映し出されている。それを見た瞬間、胸の奥がチクリと痛む。自分は今、布団の中で何も成し遂げられずにいるのに。
そんな経験、あなたにもありませんか?
「あの人はあんなに充実しているのに、自分はなんて退屈なんだろう」
「みんなはもっと上手くやっているのに、自分だけが取り残されている気がする」
SNSを開くたびに、他人の「キラキラした切り抜き」と、自分の「泥臭い現実」を突きつけられる。これは、現代を生きる高校生にとって、最も避けるのが難しい「心の毒」です。でも、安心してください。あなたがダメなわけではありません。ただ、SNSという仕組みが、あなたの脳の性質を巧みに利用しているだけなのです。
「社会的比較理論」を知ることで、SNSの正体が見えてくる
心理学には「社会的比較理論」という考え方があります。人間には本能的に、自分を他者と比較して、自分の立ち位置を確認しようとする性質があるという理論です。原始時代、集団の中で自分がどのくらいの能力を持っているかを知ることは、生き残るために必要不可欠でした。しかし、現代のSNSは、この本能を悪い方向に暴走させます。
SNS上で私たちが目にするのは、他人の「ハイライト(最高の瞬間)」です。悩みも、失敗も、寝起きの顔も、誰にも見せない努力の過程も、すべて削除された「加工済みの人生」です。一方で、私たちは自分の「舞台裏(すべて)」を知っています。自分の弱さ、不安、情けなさ、全部知っているのは自分だけです。
「他人のハイライト」と「自分の舞台裏」を比較する。これほど不公平で、自分を傷つけるゲームはありません。この比較は、どれだけやっても勝つことができないようにできているのです。
比較のループから抜け出すための3つのステップ
SNSの時間を減らすことは、単なる「スマホ断ち」ではありません。これは、あなたのメンタルを守り、自分自身を好きになるための「防衛戦」です。今日からできる、具体的な習慣を提案します。
- 「ミュート機能」をフル活用する
フォローを外すのは気が引ける……という相手でも、ミュートなら誰にもバレません。「見ると心がざわつく」「なぜか疲れる」というアカウントは、迷わずミュートしてください。あなたのタイムラインは、あなた自身が選んだ「心地よいもの」だけで満たしていいのです。 - 「朝の1時間」と「寝る前の1時間」はスマホを遠ざける
朝起きてすぐにSNSを見ると、脳は「他人の評価」を基準に一日をスタートさせてしまいます。また、寝る前は脳が疲れやすく、ネガティブな思考に陥りやすい時間帯です。物理的にスマホを枕元から遠ざけ、代わりに好きな音楽を聴く、本を読む、といった「自分だけの時間」を確保してください。 - 「いいね」の数=自分の価値ではないと脳に言い聞かせる
行動心理学的に、SNSの「いいね」は、脳内で報酬系と呼ばれる「快感」を刺激します。しかし、これは「承認欲求」という麻薬に近いものです。数字が伸びないからといって、あなたの存在価値が減るわけではありません。SNS上の数字は、ただの「データ」に過ぎないということを、論理的に自分に言い聞かせてください。
「自分磨き」の主語を「他人」から「自分」へ戻す
SNSの時間を減らして余った時間、あなたは何をしますか?
部活の自主練をあと15分だけやってみる。ずっと読みたかった小説を数ページめくる。あるいは、ただ窓の外の空を見上げて、今日あった良かったことを一つだけ書き出してみる。
他人の人生を覗き見している時間は、どれだけ長くても「他人の物語の観客」にしかなれません。しかし、スマホを置いて自分の目の前のことに集中する時間は、確実に「自分の物語の主人公」としての時間を積み上げることになります。
人は、自分で決めた目標に向かって努力している時、最も輝きます。そして、その輝きは、誰かに認められるためのものではなく、自分自身が「今日の自分、悪くないな」と思えるためのものです。
今日から始める「SNSとの付き合い方」のルール
SNSを完全にやめる必要はありません。大切なのは、SNSを「自分の人生を豊かにする道具」として使いこなすことです。以下のルールを、今日から一つだけ試してみてください。
- 「目的のないスクロール」を禁止する
「誰かからメッセージが来ていないか確認する」「特定の情報を調べる」といった目的がある時だけアプリを開く。目的がないままタイムラインを眺めるのは、ただ自分の心をすり減らすだけの行為だと理解しましょう。 - 「自分を好きになれる情報」だけをフォローする
あなたの夢を応援してくれる人、美しい景色を見せてくれる人、クスッと笑える投稿をする人。あなたの心が温まるようなアカウントを増やし、見終わった後に「なんだかやる気が出てきたな」と思えるSNS空間を作り上げてください。 - リアルな場所での「小さな成功」を大切にする
SNSで「いいね」をもらうことよりも、部活で顧問に褒められた、テストの点数が1点上がった、友達に「ありがとう」と言われた。そんな、誰にも見られないけれど確かな「自分の成長」を、自分自身で認めてあげてください。
最後に一つだけ、伝えておきたいことがあります。あなたは、SNSの中の「映える写真」よりも、ずっとずっと深くて、複雑で、魅力的な人間です。他人の人生を追いかけて、自分を見失うのはもう終わりにしましょう。
SNSの画面を閉じて、顔を上げてみてください。そこに映っているのは、これからいくらでも自分を磨いて、いくらでも素敵な人になれる、可能性に満ちたあなた自身です。その自分を、今日から一番大切にしてあげてください。「あの人、なんかいいな」と思われる人は、SNSで自分を飾っている人ではなく、自分の人生を、自分の足でしっかりと歩んでいる人なのですから。