自分を褒める習慣をつける
「テストで80点を取ったけれど、隣のあの子は95点だった」「部活でレギュラーになれたけど、ミスをしてコーチに怒られた」。そんなふうに、何かを成し遂げてもすぐに「でも、もっとすごい人がいる」「まだまだダメだ」と自分を否定していませんか?
学校という狭い社会では、どうしても他人との比較がつきまといます。誰かと自分を比べて「自分はまだまだだ」と卑下し続けることは、一見すると向上心があるように思えるかもしれません。しかし、脳科学の視点から見ると、それは自分の中に「自分を攻撃する敵」を飼っているのと同じことなのです。
自分を厳しく律することと、自分を攻撃することは全く別の話です。今回は、あなたがあなた自身の最大の味方となり、結果として周囲からも愛される「敵を作らない人」になるための、もっとも重要な技術についてお話しします。
脳は「否定」を理解できない
なぜ、自分を褒めることがこれほどまでに重要なのでしょうか。まずは、私たちの脳の仕組みについて少しだけ理解しておきましょう。
脳科学の世界では、脳は「自分が言った言葉や、自分に対して抱いているイメージを、そのまま現実だと勘違いする」という特性があることがわかっています。例えば、「緊張してはいけない」と自分に言い聞かせれば聞かせるほど、脳は「緊張」というキーワードにフォーカスし、さらに心拍数を上げてしまうのです。
同じように、毎日「自分はダメだ」「どうせあいつより劣っている」と心の中でつぶやいていると、脳は「自分は攻撃されるべき対象である」というプログラムを書き込んでしまいます。すると、不思議なことに、周りの人たちからも「少し雑に扱ってもいい存在」として認識されるようになります。自分自身が自分を粗末に扱っていると、その無意識のサインが表情や姿勢、声のトーンに表れ、他人もあなたを軽んじてしまうのです。
「自己肯定感」は最強の防具である
「敵を作らない」ということは、誰にでもヘコヘコして機嫌を取ることではありません。本当の意味で敵を作らない人は、自分の中に揺るぎない「自己肯定感」という防具を持っています。自分を認めている人は、他人の成功を妬む必要がありません。他人の幸せを素直に喜べる余裕が生まれるからです。
逆に、自分を認められない人は、他人の評価に過敏になります。誰かが自分より褒められていると、それを「自分の価値が奪われた」と感じてしまい、無意識のうちに攻撃的になったり、陰口を叩いてしまったりするのです。これこそが、学校で「敵」を作ってしまう最大の原因です。
今日からできる「自分褒め」の技術
では、どうすれば自分を褒める習慣を身につけられるのでしょうか。「褒める」といっても、大げさな成功体験を探す必要はありません。行動学の観点から、誰にでもできる具体的なステップを紹介します。
- 「できたこと」を記録する「スモール・ログ」
夜、寝る前にノートやスマホのメモ帳に「今日できたこと」を3つだけ書き出してください。ポイントは、どんなに小さなことでもいいということです。「朝、ちゃんと起きられた」「授業で一度だけ手を挙げた」「友達に挨拶をした」。これだけで十分です。脳は「記録する」という行為によって、その行動を「価値あるもの」として認識し始めます。
- 「プロセス」を褒める
結果(テストの点数や試合の勝敗)ではなく、そこに至るまでの過程を褒めましょう。「点数は悪かったけれど、最後まで諦めずに計算問題を解いた」「試合には負けたけど、練習で教わった動きを意識した」。結果は運や相手の調子に左右されますが、プロセスは自分だけのものです。プロセスを褒めることで、あなたは「結果が出なくても自分を信じられる」という最強のメンタルを手に入れることができます。
- 「自分への言葉かけ」を変換する
もし、親友がテストで失敗して落ち込んでいたら、あなたは何と声をかけますか?「お前はダメな奴だ」なんて言いませんよね。「次はどうすればいいか一緒に考えよう」とか「頑張ったのは知ってるよ」と言うはずです。その温かい言葉を、そのまま自分自身にかけてあげてください。自分を親友のように扱うこと。これが、他人に優しくするための第一歩です。
「敵を作らない人」の正体
自分を褒める習慣が身につくと、あなたの周囲には不思議な変化が起こります。自分に自信がある人は、他人に対して「マウント」を取る必要がなくなるからです。自分を満たしている人は、他人の欠点を探して攻撃するような無駄なエネルギーを使いません。
クラスの中で、いつも穏やかで、誰とでもフラットに話せる人がいませんか?彼らは決して「誰からも嫌われないように」と怯えているわけではありません。自分という存在を自分が一番理解し、認めているからこそ、他人の言動にも寛容でいられるのです。
「自分を褒める」ことは、ナルシストになることではありません。それは、自分という人間を、一生かけて付き合っていく最高のパートナーとして大切にするということです。あなたがあなた自身の味方でいるとき、世界は驚くほど優しくなります。
今日、家に帰ったら、鏡の中の自分に向かってこう言ってみてください。「今日も一日、よく頑張ったね」と。最初は恥ずかしいかもしれません。でも、その小さな一言が、あなたの脳の回路を少しずつ書き換え、あなたの未来を、敵のいない穏やかで自由なものに変えていくのです。