相手の話に自分の体験を少しだけ添える
クラスで話をしているとき、「うん、うん」と相づちを打つだけになっていませんか? もちろん、それだけでも相手は「話を聞いてくれているな」と感じてくれます。でも、もう一歩進んで「この人と話すと、なんだかすごく楽しい!」と思われるようになるための、とっておきの魔法があります。
それは、相手の話を聞いたあとに、自分の体験を「少しだけ」添えることです。
「自分語り」にならないための黄金ルール
ここで一つ、大切な注意点があります。相手が「昨日、公園で大きなカブトムシを見つけたんだ!」とワクワクして話しているときに、「あ、僕もこの前、山でクワガタを捕まえたよ! すごいでしょ!」と、すぐに自分の話にすり替えてしまうのはNGです。これは「自分語り」と言って、相手は「私の話、ちゃんと聞いてくれたのかな?」と少し寂しい気持ちになってしまいます。
好かれる人がやっているのは、「相手の話」を主役にしたまま、自分の体験を「調味料」のように少しだけ加えることです。脳科学の世界では、人間は「自分と似ている人」に対して、無意識に親近感を持つということがわかっています。これを「ミラーリング」と呼びます。相手の話に自分の体験を重ねることで、脳は「あ、この人は自分と同じ仲間だ!」と判断し、安心感を感じるのです。
「共感のスパイス」を振りかける魔法のフレーズ
では、具体的にどうやって自分の体験を添えればいいのでしょうか。会話の「型」を覚えておきましょう。コツは、「相手の話への感想」+「自分の小さな体験」という順番にすることです。
- 相手:「昨日、お母さんと一緒にカレーを作ったんだよ!」
- あなた:「すごいね! カレー、おいしそう! (感想) ぼくもこの前、家でたまねぎを切るお手伝いをしたんだけど、目が痛くて大変だったよ。カレー作りって意外とむずかしいよね! (自分の体験)」
このように、相手の話を先にしっかりと受け止めてから、自分の体験をプラスするのです。こうすると、相手は「自分の話を聞いてくれたうえに、共通の話題までできた!」と、会話がぐっと盛り上がります。
「語用論」から学ぶ、会話のキャッチボール
「語用論(ごようろん)」という、ことばの使い方を研究する学問では、会話を「キャッチボール」に例えます。ボールを投げられたら、まずはしっかりとキャッチする。そのあとで、自分のボールを投げ返す。このリズムが大切です。
もし、相手がまだボールを持っているのに、無理やり自分のボールを投げつけたらどうなるでしょう? ボールがぶつかって、会話は止まってしまいますよね。相手が「カブトムシの話」というボールを投げてきたら、まずは「すごいね!」というグローブでしっかりキャッチしましょう。そのあとに、「ぼくも虫取り、大好きだよ」と、自分のボールをそっと添えて返してあげるのです。
明日からできる「聞き上手」のトレーニング
もっと仲よくなりたい友達との会話で、こんなふうに試してみてください。
- 友達が「今日の算数のテスト、難しかったね」と言ったら……
→「本当に難しかったね! ぼくも最後の計算問題で、すごく悩んじゃったよ。あそこ、ひっかけ問題みたいだよね」 - 友達が「今度の日曜日、おばあちゃんの家に行くんだ」と言ったら……
→「いいな! おばあちゃんの家、楽しそう。ぼくもこの前、おじいちゃんの家でスイカを食べたのを思い出したよ。やっぱり親せきの家って特別だよね」
ポイントは、「自分も同じような気持ちだよ」というサインを送ることです。あなたの体験が、相手にとっての「共感のスパイス」になります。相手は「この人は自分の気持ちをわかってくれる!」と、あなたに対してどんどん心を開いてくれるようになるはずです。
「話を聞く」ことは「相手を大切にすること」
あなたの体験を少しだけ添えることは、決して自慢話をするためではありません。「あなたの話を聞いて、ぼくも同じようなことを感じたよ」というメッセージを伝えるためです。これは、相手を大切に思う気持ちがないとできない、とても高度で優しいコミュニケーションです。
最初は少しむずかしく感じるかもしれません。でも、まずは「相手の話を先に聞く」ということだけ意識してみてください。それだけで、あなたはクラスの中で「この人と話すと楽しい!」と言われる、とびきりの人気者への第一歩を踏み出しています。
さあ、明日の休み時間、友達の話に耳をすませてみましょう。そして、あなたの素敵な体験を、少しだけ添えてみてください。きっと、昨日よりもっと友達との距離が近くなるのを感じるはずですよ。